労働組合、NPO法人、ジャーナリスト、弁護士、大学教授などが主体となり、日本のブラック企業の頂点を決めるため、2012年から始まった「ブラック企業大賞」。
そんな社会的に意味のある企画で取り上げられた企業とは、一体どんなものなのだろうか?
日本の有名ブラック企業を学ぶことで、今後のあなたの人生を良くするヒントが見つかるかもしれない。
「ブラック企業大賞2012」受賞結果
受賞名 | 企業名 |
---|---|
大賞 | 東京電力株式会社 |
市民賞 | ワタミ株式会社 |
業界賞 | 株式会社富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ(富士通SSL) |
業界賞 | 株式会社フォーカスシステムズ |
ありえないで賞 | 株式会社ゼンショー(すき家) |
特別賞 | 株式会社ウェザーニューズ |
その他ノミネート企業 | SHOP99(現ローソンストア100、株式会社九九プラス) 株式会社すかいらーく 有限会社陸援隊、株式会社ハーヴェスト・ホールディングス 株式会社丸八真錦 |
大賞「東京電力株式会社」
忘れることはできない2011年3.11東日本大震災。死者は15,894人、重軽傷者は6,152人、方不明者は2,561人の未曽有の大災害である。
被害拡大の要因に、「東京電力株式会社」による福島第一原発のずさんな管理体制がある。
通常このような異常事態には、東京電力からの緊急事態発生の報告を受け、政府が原子力緊急事態を宣言する。
しかし、政府へ報告は地震発生の1時間後だった。東京電力担当者は
「混乱のなかで報告しそびれたのかも知れない。当時の対応が適切だったか、詳しく調べたい」
と発表。
宣言の遅れは、そのまま近隣住民の避難の遅れに繋がった。
その後も、安全管理不足、教育不足、対応遅れ、不正、不祥事隠ぺい、改ざん、虚偽報告などが今だ止まらない。
ブラック企業被害に、被害者数の多い少ないは関係ないが、地球規模の悪影響を広めたことが大賞受賞の理由のひとつだろう。
市民賞「ワタミ株式会社」
国内600店舗以上の居酒屋チェーンを展開する「ワタミ株式会社」は、外食産業のみならず介護事業まで手を伸ばしている。
2008年6月、入社2ヶ月の正社員、森美菜さん(当時26歳)は過労自殺に追い込まれた。
亡くなった美菜さんは、厚生労働省が定める過労死ライン「月80時間の残業」を優に超す、月141時間の残業を強いられていた。
連続7日間にわたる、15時から翌朝3時半までの12時間深夜労働。
その他にも休日出勤、強制ボランティア活動、早朝研修などで美菜さんは心身共に疲れ切り、精神疾患を患っていた。
美菜さんの日記には
「体が痛いです。体が辛いです。気持ちが沈みます。早く動けません。どうか助けてください。誰か助けてください。」
と悲痛な叫びが記されていた。
業界賞「株式会社富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ(富士通SSL)」
コンピュータソフトの研究、開発などを行う「株式会社富士通ソーシャルサイエンスラボラトリ」が業界賞を受賞した。
富士通SSLでは、厚生労働省が定める過労死ライン「月80時間の残業」を超える時間外労働を強いられていた男性社員が亡くなっている。
男性社員はシステムエンジニアとして働いていたが、人員不足による長時間労働に加え、ミスの許されない精神的な圧力も受けていた。
2003年うつ病を発症した男性社員は、治療薬の過剰摂取により命を失う。
富士通SSLは大企業富士通の下請け会社である。親会社からの重圧が、最終的に男性社員に流れてしまったのかもしれない。
ピラミッドの下に存在する弱い立場の者がいつも被害者になる。
しかし、ブラック企業の加害者達にいつまでも高みの見物をさせてはいけない。
業界賞「株式会社フォーカスシステムズ」
「株式会社フォーカスシステムズ」は2010年東証第一部上場のIT企業だ。
同社では、2006年勤務4年目の男性社員(当時25歳)が命を落としている。
男性の仕事は、亡くなる1年ほど前から急激に忙しくなり月平均112時間の時間外労働を続けていた。男性の両親によると、出勤前の朝食時に眠ってしまうことがあるほど疲れ切っていたと言う。
ある日、男性は初めての無断欠勤をし、京都鴨川の川べりでウイスキーをラッパ飲みし急性アルコール中毒で死亡した。
うつ病を発症した男性の精神は、正常な判断ができる状態ではなかったのだ。
会社側は、「男性の死は過労死ではない」と否定したが、2007年会社に5960万円の損害賠償を支払う判決が出されている。
ありえないで賞「株式会社ゼンショー(すき家)」
牛丼チェーン店再大手「すき家」を展開する「株式会社ゼンショー」がありえないで賞を受賞した。
2008年ゼンショーは、月最大169時間もの残業代不払いで刑事告訴され、原告3名に対し994,777円の支払いをしている。
ゼンショーでは、アルバイトに正社員並みの労働と責任を強要。さらに時間外労働をしても残業代が支払われることは無かった。
深夜帯11時間連続の1人シフト勤務でも有名なゼンショーだが、その後の全く改善がみられないため、2014年ブラック企業大賞「要努力賞」も受賞している。
特別賞「株式会社ウェザーニューズ」
自称、世界最大の民間気象情報会社の「株式会社ウェザーニューズ」では、2008年新入社員が過労自殺している。
入社わずか半年で時間外労働1,000時間(月平均166時間)の中で、上司から「何のために生きているのか」などのパワハラを受けていた。
この件に関して、ウェザーニューズ副社長は謝罪と再発防止を口にしたが、その後も社員の労働時間などを偽装している疑いがある。
人間否定をするのもブラック企業の特徴のひとつで、そもそも従業員を人間として考えていない。
そのため罪の意識も薄く、企業のトップ連中が入れ替わらない限り改善される余地はない。
ノミネート企業「SHOP99(現ローソンストア100、株式会社九九プラス)」
ローソンの子会社で、格安コンビニ「SHOP99(現ローソンストア100)」を運営する「株式会社九九プラス」。
2006年、入社わずか9ヶ月で店長になった男性は管理監督者の名目で残業代の支払いはされず、店員時代に比べ8万円も賃金が下がった。
それに付け加え、37日連続勤務などの激務でうつ状態になり休職した。
ブラック企業ではどんどん人が辞めるため人が育たない。よって今回のような繰り上げ当選が日常的に起こるのだ。そして、また辞めていくの繰り返し。
このことに気づいていない低脳な経営者らは、逆に「人件費が安くすむ」と喜んでいるのであろう。
ノミネート企業「株式会社すかいらーく」
ガスト、バーミヤン、ジョナサンなどファミレスチェーン店を展開する「株式会社すかいらーく」。
2004年店長の中島富雄さんが月180時間を超える残業や上司からの度重なる暴言などが原因で過労死した。
すかいらーくは謝罪し、損害賠償金の支払い、再発防止を約束したが、その3年後店長の前沢隆之さんが過労死。
前沢さんは、正社員ではなく1年雇用の契約店長であった。
業務内容と責任はそのままの店長職を非正規社員化され、契約期間が終了すれば使い捨てられる恐怖が常に付きまとうのだ。悪意があるとしが思えない。
ノミネート企業「有限会社陸援隊、株式会社ハーヴェスト・ホールディングス」
2012年4月29日金沢発の高速バスは目的地東京ディズニーランドへ到着することはなかった。
死亡者7名、重軽傷39名に及んだ関越自動車道高速バス居眠り運転事故。
バス会社「有限会社陸援隊」は28項目242点の法令違反。
ツアー企画会社「株式会社ハーヴェスト・ホールディングス」でも違法行為が日常化していた。
ノミネート企業「株式会社丸八真錦」
布団などの寝具を扱う創業50年以上の老舗「株式会社丸八真綿」2008年不当解雇の問題でノミネートされた。
丸八真綿では、リストラ対象の社員3名を新設したダミー会社に転籍させ、その後ダミー会社とともに社員の整理するという陰湿なやり方だった。
社員らは提訴し、2011年和解が成立。事実上、不当解雇された社員らの全面勝訴で幕を閉じた。
丸八グループの社訓「目標を持ち、今日に行い、明日に向かう」に従い、不当解雇を進めようとしたようだ。