労働組合、NPO法人、ジャーナリスト、弁護士、大学教授などが主体となり、日本のブラック企業の頂点を決めるため、2012年から始まった「ブラック企業大賞」。
そんな社会的に意味のある企画で取り上げられた企業とは、一体どんなものなのだろうか?
日本の有名ブラック企業を学ぶことで、今後のあなたの人生を良くするヒントが見つかるかもしれない。
「ブラック企業大賞2015」受賞結果
受賞名 | 企業名 |
---|---|
大賞 | 株式会社株式会社セブン‐イレブン・ジャパン |
WEB投票賞 アリ得ないで賞 |
株式会社引越社関東 |
ブラックバイト賞 | 株式会社明光ネットワークジャパン(明光義塾) |
特別賞 | 暁産業株式会社 |
その他ノミネート企業 | 株式会社エービーシーマート 株式会社フジオフードシステム |
大賞「株式会社セブン‐イレブン・ジャパン」
2015年ブラック企業の大賞に選ばれた「株式会社セブン‐イレブン・ジャパン」は、言わずと知れたコンビニ業界再大手である。
コンビニの「セブンイレブン」は日本国内18,572店舗(全店売上4兆2,910億6千7百万円)、海外には40,548店舗を展開(2016年4月現在)する超巨大組織だ。
受賞理由のひとつは、昨今社会問題になっているブラックバイト問題である。
ブラックバイトとは、低待遇のアルバイトが正社員並みの労働や責任を雇い主から押し付けられ、サービス残業、休憩時間カット、ノルマ強要、パワハラ、セクハラなどの違法行為を当たり前に受けることもある。
この問題に関して、セブン本社は「加盟店オーナーの責任」としているが、ブラックバイトの背景にはセブン本社が加盟店を食い物にする驚愕のフランチャイズシステムがある。
一般的なフランチャイズでは「粗利」に対して本部に支払うロイヤリティが発生する。
原価100円のジュースを3本仕入れ、売値150円で2本売れた場合
原価100円x3本=300円
売上300円-原価300本=粗利0円
通常、粗利0円であればロイヤリティは当然ゼロである。
しかしセブンイレブンの会計では、売れ残った廃棄するジュース1本分は原価に含まれない。
すると魔法のように現れた粗利100円に対して、ロイヤリティ(43%以上)を納めなければならない。
もちろん加盟店の実際の収支はロイヤリティ分43円以上が赤字となる。
この特殊な会計システムによる執拗な取り立てが、加盟店の経営難を招き、破産や自殺に追い込まるオーナーも後を絶たない。
深刻な経営圧迫は、劣悪な職場環境や従業員の低待遇を生み出し、結果的にアルバイトまで飛び火するのだ。
WEB投票賞&アリ得ないで賞「株式会社引越社関東」
WEB投票賞&アリ得ないで賞のW受賞となったのが、アリさんマークの引越社でお馴染み「株式会社引越社関東」である。
百聞は一見にしかず、まずは「YouTube 株式会社引越社関東」を御覧いただこう。
突如として懲戒解雇を言い渡された従業員A氏が所属する労働組合(プレカリアートユニオン)の抗議行動に対して、副社長らの恫喝映像が確認できただろうか?
「ワレェ!何を足踏んどんねん!謝ったらしてもええんか?」
分かりやすいブラックぶりでインパクトある映像はネット上に拡散され、200万人以上のユーザーに閲覧されている。
ブラック企業として非常に真面目で優秀な成績を残し、文句なしのW受賞を獲得した。
ブラックバイト賞「株式会社明光ネットワークジャパン(明光義塾)」
全国2,126教室(2016年2月29日現在)の個別指導塾「明光義塾」を運営する企業「株式会社明光ネットワークジャパン」が見事ブラックバイト賞を受賞した。
注目するべきは、講師アルバイトに対する「コマ給」制度がある。
コマ給とは、1授業(1コマ)に対して報酬を支払う給与システムだ。
授業以外にも「授業前の予習」と「授業後の報告書作成」の報酬として1日30分間分の手当てが支払われていたが、実際は最低1時間以上がかかる作業だった。
つまり、このオーバーした時間は全く報酬なしのいわゆるサービス残業になっている。
東京新宿区の教室では、1コマ(90分)1,600円で講師アルバイトを募集している。これを時給にすると時給1,066円である。
しかしサービス残業を入れて再計算すると時給は800円まで落ち込み、厚生労働省が定める東京都の最低賃金「時給907円」には及ばない。
この件に関して、仙台労働基準監督署を皮切り全国の労基から是正勧告が出された事が受賞理由である。
特別賞「暁産業株式会社」
特別賞を受賞した「暁産業株式会社」は消防車、消防用品を販売する福井県の企業だ。
当時19歳の従業員に対し、直属の上司が「辞めてしまえ」「死んでしまえばいい」などの度重なる馬頭、暴言を浴び続けた。
被害者は、うつ状態となり自殺した。
被害者遺族は会社と上司らを相手取り訴訟を起こした結果、福井地裁は「典型的なパワーハラスメント」であるとし会社と上司に7,200万円の支払いを命じた。
この受賞は、全国に名が通った大企業であろうとも、従業員44名の地方の中小企業であっても同じことが起こりえる恐ろしい現実を知らしめるためのものだ。
ノミネート企業「株式会社エービーシーマート」
国内849店舗(2016年2月末日現在)の靴チェーン店「ABCマート」を運営する「株式会社エービーシーマート」。
従業員に対し、厚生労働省が定めた過労死ライン80時間を超える月100時間以上の残業を強制していた。
さらに労働基準監督署の再三の指導や是正勧告を無視し、刑事告発まで至ったことがノミネート理由になる。
ノミネート企業「株式会社フジオフードシステム」
「株式会社フジオフードシステム」は関西方面を中心に「まいどおおきに食堂」「串家物語」「つるまる」などの飲食店、居酒屋を運営している。
ノミネート理由は、違法な長時間労働、法律で定められている残業代割り増し分の未払い、さらには店長による労働時間の改ざんである。
「お客様に喜んでいただくと同時に、働いている全ての仲間の幸せを大切に、大切に、共感できる組織でありたい。」
と大変立派な企業理念をかかげているが、「仲間の幸せ」をどう考えていたのか疑問が残る。